地球の歩き方によれば、東南アジアよりも中東よりも、南米において最も観光客狙いのスリや強盗が多いように読み取れます。どの国の紹介ページにも必ずと言っていいほど、騙されただの盗まれただのの読者投稿や、対策コラムばかり。日本人宿の情報ノートにもたくさん被害のレポートが書かれています。
でも、僕たちの経験では東南アジアよりも南米は何事もスムースに事が運んだし、客引きは多くても騙すような人まではいなかった。最初ペルーに着いた頃は、ものすごく警戒して荷物を体に引き寄せて歩いていましたが、最後にはすっかりルーズに安全ポーチも使わずにぶらぶらしていました。
東南アジアにおいては、ネパールで物乞いが多かったのと、タイのトゥクトゥクの値段交渉が面倒だったのと、ベトナムの外国人料金を除けば、特に気にするようなことはなかった。ベトナム人も2日も顔を合わせていると友達になった気になるのか、値段を下げてくれるし、仮に高い値段で買わされていたとしても、それを気付かせないので気分が悪くなることがない。ホテルのスタッフなどから料金情報をあらかじめ入手しておいて、こちらの言い値で強引に圧し切ることも。どう転んでも、最後にはお互い笑顔でバイバイ出来る。アジアのしたたかさと優しさが共存しているように感じるのです。
エジプトでは、そうは問屋が卸さない。空港でのタクシーの客引きなどは、目がいっちゃってます。ホテルの価格交渉も、タクシーの支払いも、何から何までヤバい雰囲気。相手が殺気立っていて、しつこいし、一度折り合っても後でぶり返す。
基本的に交渉下手なのか、20(外国人価格)と言うところを10(エジプト人価格)と言うと、15とか18とかにしようとせず、20と言い張る。この場合たいてい押し問答の末10になるのだが、ここに至るまでが長いし、その頃には不機嫌になっていて物別れムードです。
嘘をついて要らぬサービスを押し売りする騙し方も多い。
カイロからギザのピラミッドを見に行くには、ツアーでなければローカルバスに乗るのが一般的な手段です。僕たちが357番ピラミッド行きのバスの停留所を探して、ターミナルをうろうろしていると、自称ヒルトンホテルのセキュリティマネージャーが、親切にこっちだよと教えてくれます。探していた357番ではなく、地球の歩き方にもう一つ書かれていた997番でしたが、ピラミッドの裏口まで行くので、ギザに自宅があると言うヒルトンと一緒に乗車。
ピラミッドが見えてきてしばらくすると、ここで降りてついてこいと言います。入り口らしき場所は見当たりませんが、すぐそこからスフィンクスで入り口だけ教えたら僕は帰るからと言っているので、不安ながらもついて行くと、案の定、待ち受けていたのは馬かラクダでピラミッドを一周するツアーのオフィス。ここで馬かラクダに乗ってピラミッドに行けば、入場料も要らないし歩かなくて済むのでラクチンだと、売り込みが始まりました。
ツアーだと見学時間が決められてしまうから使うつもりも無かったし、ラクダは乗る時は安くても、降りる時にラクダを座らせないと降りられないため、高額を要求されると知っていたので、即刻拒否。それ以上しつこくされるのが嫌だったので、動物アレルギーだからダメだと嘘をついて、逃げてきました。
親切に道を教えてくれるのだと思っていたら、売り込みされただけでなく、入り口からも随分と遠ざかってしまったことに気がつき、腹立たしいこと甚だしい。今回の旅行で始めて騙しに引っかかってしまいました。
泊まったホテルの主人も、顔を合わせる度に高額のツアーを売り込んできます。列車はもう満席でとれないだの、オレが手配すると高級ホテルも安くなるだの、ばればれの嘘をついてひとり350ドルのツアーを買えとうるさい。だいたいこちらが値下げ交渉もしていないのに、君たちには寝台列車に代えてあげようとか、ホテルのランクを上げてあげようとか、言ってくるのがおかしい。
自分たちで駅まで行ってみれば列車の席もちゃんと取れたし、町をぶらぶらしたりホテルでのんびりする時間の無い、忙しいだけのツアーに参加したくないので、きっぱり断りました。すると突然態度が変わって、顔を合わせても面倒くさそうに挨拶するし、無料のはずのホテルのパソコンを少しいじっていたら、料金を払えなどと言ってくる始末。きっとツアーも必要なものが料金に含まれておらず、オプション料金を取られるに決まっています。
そんなこんなでとても疲れるエジプト。歴史に名を残す大文明を築いた祖先や、アラブのリーダーと呼ばれた時代もあったエジプトの誇りは、いったいどこにあるのでしょうか。