たった1時間話をしただけなのに、特別な親切を与えてくれるトルコ人の優しさに胸打たれて、ホテルに戻る途中、次なる親切人ジンナンに出会いました。
ジンナンは自転車やスクーターをレンタルする会社のボス。なにか乗り物を借りて、近場の観光をしようと思っていたので、たまたま通りがかったこの会社に、情報収集のため立ち寄りました。店に入るとすぐにアップルティー(激甘)を出してくれ、料金の説明を受けました。ギョレメを訪れる日本人や韓国人から、おかしな言葉ばかりを教えてもらっているジンナン。説明の間も冗談ばかり言っています。
肝心の値段の方は、時間単位で細かく決められていますが、やや高め。こちらが渋っていると、ATV(四輪バギー)が絶対面白いからオススメだと言い、今日借りるなら安くしてくれると言います。ゆんじょんが面白ろがって半額から交渉を始めると、向こうも面白がってのってきました。最終的に2時間80リラ(約7,975円)のところ、2時間半でガソリン代込み55リラ(約5,483円)で折り合いがつき、情報収集だけの筈が、そのままATVで近場の見どころを見て回ることになりました。
生まれて初めて乗るATV。フットペダルでアクセルを踏むことを除けば、スクーターと同じ感覚で乗れます。店の前で少し練習したら、すぐに出発です。
向うのはギョレメの西側にあるラブバレーというキノコ岩が見られる渓谷と、チャウシンという岩窟住居跡のある村、ローズバレーという夕日が美しい渓谷を見て、ギョレメの外れにある高台のサンセットポイントで日没を眺めるというコースです。アスファルトや固い路面ならともかく、ブレーキを握っていてもズルズルと滑り落ちてゆくような、柔らかい砂地の坂のような場所はなかなか運転が難しい。走っていると全身砂だらけになります。
ラブバレーでキノコ岩を眺めた後にやって来た、チャウシンではガイドをカフェに待たせて、岩窟住居のある岩山を歩いて登りました。10分で戻ってくる約束でしたが、頂上に行くまでに10分はかかるような山です。山の向こうに見えるキノコ岩や、偶然見つけたリクガメの写真を撮ったりしていたら10分では到底戻れません。
頂上で夕日を待っていた日本人女性に偶然出会い、フレスコ画の残る教会まで案内してもらいました。Iさんは名古屋からの一人旅。チェコから列車でトルコまで来て、これからシリアを抜けてヨルダンに向おうとしているとのこと。僕たちよりちょっと年上なのに、女一人で危なさそうな地域を渡ってきたなんてスゴイ。お互いの旅の話や名古屋のローカルな話題に花が咲き、気がつけばガイドと別れてから1時間ほども経っていました。
山を降りる途中、ガイドが僕たちを心配して探しに来ていました。ここで予定外に時間を使ってしまったので、ローズバレーは行くことが出来ず、途中で引き返してサンセットポイントに向いました。
戻ってくるとジンナンが待っていて、再び冗談の応酬。冗談ばかり言っている人ですが、スタッフとの会議中は真剣そのもの。しっかりボスの顔をしています。またレンタル会社の仕事以外に、映画などの撮影コーディネーターもやっています。国外から来る撮影チームを受け入れたり、エキストラの役者を手配したり。個人的な信頼を得ることが出来なければ成り立たない仕事をしているのだと知って、感心しました。
すっかり仲良くなってしまい、翌日からは店の前を通るたびにコーラをご馳走してくれたり、お茶を出してくれたりと、大変なもてなしようです。終いにはこちらが気後れするほど。ギョレメを離れる時には、とても淋しがっていました。しっかりとした握手の感触が忘れられません。
ATVで走った後、ホテルに戻る途中でOsman Houseに再び立ち寄り、翌日以降の部屋が空いていることを確認して予約を入れました。引っ越ししてみると、想像通り掃除の行き届いて居心地の良い、きれいなデザインの部屋です。Güwen Cave Pensionより高い、一泊70リラ(約6,978円)ですが、納得のできる買い物でした。
ホテルの屋上にあるレストランが、市内の他のレストランより安いのにとても美味しくて、毎晩ここで食事しました。朝食もこのレストランで食べるのですが、ビュッフェの献立の多さとサフランボルのホテルを凌ぐ味。トルコに来てから朝食に温かいものを食べる機会が無かったので、その場で卵料理を作ってくれるのが何ともありがたい。