以前から憧れていた街、ビルバオに到着です。ここはバスク地方の州都として、バスク民俗独自の文化を育んできた土地として知られています。実際に街を見てみると、驚くほど近代化されていて、現代になってからスペインの工業地帯として、また金融都市として発展してきた歴史を肌で感じる事が出来ます。
アートに興味のある人にとっては、グッゲンハイム美術館がある事から、ある意味巡礼地。フランクゲーリーによって設計された美術館は、その奇抜な外観から、美術館を知らない人でも一度は目に触れた事があるはず。美術館だけでなく、街の中心部にパブリックアートが点在していて、美術館を中心としたアートの街としての再開発は、都市計画の好事例だと言えます。
郊外の幹線道路沿いにある安ホテル、Etape Hotelに到着すると、3日分の宿泊代をまとめて支払い、荷物を運び込みました。かれこれ3ヶ月以上、毎日続けている作業です。車のトランクがある事に気を許し、ついつい荷物も増えがち。目一杯詰め込んだ二人分のバックパックの他に、両手にどっさり手提げ袋で、あたかも夜逃げ中といった風貌になってしまいます。
グッゲンハイム美術館は、再開発地区と歴史的な建物の少なくない地区とを隔てる川沿いに建っています。昆虫か魚を彷彿とさせる独特のフォルムと、100年は持つと言われているチタン合金の外装。鈍い光を反射する巨大な物体が整えられた芝生に囲まれて建つ姿を見ると、収蔵される作品よりも建築そのものが目的で訪れる来訪者が多いと言われても驚きません。
僕たちがやって来た日は、たまたま展示の切替時期にあたり、残念ながら四階建ての展示のうち、二階全部と他の階のいくつかのエリアが閉鎖中。入場料は半額でした。無料で借りられるオーディオガイドを聴き始めて、ちょっと笑ってしまいました。なぜなら建物そのものの解説が、長くてなかなか終らない。フランクゲーリー本人や美術館長のインタビューなども含まれていて、素晴らしく出来の良い解説(日本語吹き替え版)です。
実際に見た展示の方は、四階で展開されていたシュールレアリスム展は、これまでも何度となく見てきたダリやマグリットの作品のおさらい。有機物に倣った形やパターンを追求する展示と、家具や宝飾品の展示は少し違った見方が出来、面白く感じました。
一階で展示されていた、リチャードセラの巨大な鉄板を曲げて立てた迷路のような作品は、そのスケールの大きさに圧倒されます。その他、ジムダインの巨大な女性像、ジェフクーンズの風船で作ったチューリップの花束を巨大化した作品、前庭に立つ花で覆われた巨大な犬の像など、巨大なものばかり。大きくて、この美術館でなければ扱えないような作品がいっぱい。そう言えば美術館の建築そのものも巨大なアート作品のようです。