翌日は、ビルバオ近郊にあるポルトゥガレテに、バスク地方唯一の世界遺産であるビスカヤ橋を見に行きました。ビスカヤ橋は、船の通行量の多いネルビヨン川の両岸を結ぶために作られた、世界にここ以外にはひとつしかない運搬橋という変わった構造です。川の上空50メーターの高さに両岸を繋ぐ鉄橋があり、その下をケーブルで吊られたゴンドラが移動する事で、歩行者や自動車を運ぶ事が出来ます。
一人4ユーロ(約725円)の入場料(通行料?)を払ってエレベーターで鉄橋の上へ。鉄橋の中にはボードウォークが作られていて、歩いて反対側まで渡る事が出来ます。真上から見下ろす川と中空に浮かぶゴンドラを覗き込むのは、スリル満点。あちこちに取り付けられた解説を読むと、一定の周波数に合わせて上に乗っている人がジャンプを繰り返すと、鉄橋は崩壊するとか。パリのエッフェル塔の建設に関わった建築家が、エッフェル塔と同じ技術でもって作り上げたのだとか。鉄骨の隅々に打たれたリベットが黒光りしていました。
橋を渡って反対岸で手頃な値段のバルを見つけ、昼食を済ませたら、今度は鉄橋の上では無くゴンドラの方を使ってもと来た岸に渡ります。トラックや乗用車の他にも、買い物カゴを引いたおばさん連中や、子供を載せたスクーターのお母さんなどが乗り合わせていて、世界遺産とは言っても記念物として保管するのでは無く、地元の人々が日常的に使っているのがよく分かる。
さらに自動車でも橋を渡りました。どこでお金を払うのか、ゴンドラにどうやって誘導されるのかなど、説明書きが一切無く、分からない事ばかりでドキドキしました。ゴンドラへの乗車は係員の指示に従って、前の車に続いてゆけば良いだけ。支払いも、川を渡っている途中で係員が収集にくるので簡単。
橋を渡ってから向った先は、海に突き出した小さな島の上に聖堂が建っている風景が印象的なバキオ。観光案内所でもらった冊子には、写真が載っているものの、それが具体的にどこにあるかは書かれていません。ともかく現地に行けば何とかなるだろうと、車を走らせて1時間。起伏の激しい狭い道のつづく、海岸沿いの道路に到着。しばらく走っていると、自動車を停めて写真を撮っているフランス人のおじさんおばさん4人組に遭遇。案の定、聖堂がポツンと乗った島が見えました。
サンフアンデガステルガチェは、10世紀に作られ、現在も巡礼者も訪れるれっきとした僧院。なぜこのような場所に僧院を建てる必要があったのかは分かりませんが、ちょっと見ただけで、おそろしく大変な作業を繰り返して建設された事が分かります。島までは岩場に石を積んで作られた細い橋を渡って到達出来ます。
海岸沿いの道路からこの橋を渡っている人が見えたので、橋につづく道を探しながら坂を下りてゆくと、ちゃんと観光客のために駐車場が用意されていました。そこから合計229段の階段を上りながら、小さなトカゲがたくさん棲む島の頂上に到着。
島の上からは、遠く霞むビスケー湾の急峻な海岸線や小さな島が続く風景が幻想的。階段を上り切った達成感と素晴らしい景色に溜息が出ます。
僧院の内部は鉄格子の間から覗き見るものの、真っ暗で見る事が出来ませんが、巡礼で訪れた人が寝泊まり出来る小屋も併設されています。小屋の外に取り付けられたトイレで用をたすと、排泄物はそのまま海の中に滑り出てゆく仕掛けで、驚きました。
翌日にはフランスに向って車で移動。約一ヶ月つづいたスペイン・ポルトガルの旅も終わりです。