太陽が頭上に輝き、眩しさから自然と目を細める。赤土色の粘土を塗り固めたような、背の低い独特なアドビが建ち並ぶかわいらしい町並み。乾燥した暑さで周囲の喧騒が遠ざかったような感覚。
ここサンタフェの町は、ニューメキシコ州の州都であり、アメリカ最古の都市と言われるところ。インディアンアートの彫刻や風で回転するモビールのような風車のような作品が町中に溢れ、町行く人の口からはスペイン語が聞こえてきます。
ホワイトサンズが思い出深いエルパソを後にして、ドライブすること7時間。サンタフェに到着する20マイル前で、高速道路上でゴミ収集車が横転する事故があり、予定より1時間近く遅れてモーテルに到着しました。ラスベガス以降、何度も利用しているMotel 6チェーンのシンプルで殺風景な部屋は、僕たちにとってもうすっかり馴染みのものとなりました。さすがに長時間のドライブで疲れたので、夕食を食べたらバタンキュー。翌日の町散策に備えて早く寝ることにします。
晴れ上がった空に車を走らせると、疲れも吹き飛びます。古い町ならではの狭くて一方通行の多い市街地に到着すると、早くも土産物屋にたくさんの人だかり。ジュエリーやタペストリー、キッチンの小物まで、インディアンテイストの土産物についつい目を奪われます。見どころはたくさんありますが、まずは駐車場に近いロレット教会へ。
小さなゴシック建築の教会に観光客が集ってくるのは、礼拝堂にある螺旋階段にまつわる伝説のためです。支柱が全く無いにも関わらず、まるで床から生えてきたように伸びる階段は、ある時突然現れた白髪の男が作り上げ、完成すると姿を消したという話が残っています。伝説は割り引いて受け取っても、未だどのような技術をもって作ったのかが謎のままというから、見ておかないわけにはいきません。
30人も入れば一杯の礼拝堂はとても小さく、丁寧に保存されているのをのぞけば取り立てて特別なものはありませんが、なるほど螺旋階段だけが奇妙な存在感と違和感をもって存在を主張しています。よく見る螺旋階段から真ん中の支柱を抜き取った奇妙なデザインは、確かにどのようにして作られたのか疑問が浮かびます。全木造で釘も使われていないとか。
続いて訪れたのは、アメリカ最古の教会、サンミゲル教会。何度か再建・修復を繰り返していても、素朴なスタイルや床下に残された基盤から当初の姿に思いを馳せることが出来ます。
礼拝堂内には古い釣り鐘や古地図なども展示されています。古地図の良いあんばいに古びたトーンにしばし注目。
美術館の多い町でもあるサンタフェには、Canyon Roadという100軒以上の画廊が並んだ通りがあります。現役アーティストの作品を展示する画廊もあれば、インディアンアートを洒落たインテリアとして販売する店、100年近く年季の入った玩具やポストカードを並べる店まで、様々。いくつかの画廊に顔を突っ込んで作品を見て回っている間に、画廊のオーナーらしき人から、その日にあるオープニングパーティーに来ないかといきなり声を掛けられました。残念ながら午後にはサンタフェを出てしまう旨を告げ辞退しましたが、こんな感じに気さくに声を掛けてくれるところもサンタフェの魅力かも知れません。
その後、アメリカ最古の聖母像のあるセントフランシス教会を見て、サンフランシスコでお世話になる友人夫婦に渡すお土産を買い込んだら、町を出ます。途中サンタフェ南部鉄道駅に立ち寄り、どこかで見たような風景に写真をパチリ。
初めて訪れる町なのに、なぜか懐かしい気持ちが込み上げてくる。住んでみたい町の候補にエントリーです。