ザイオン国立公園のエントランスを入ると、チェッカーボードメサという格子状にヒビの入ったへんてこな山が待ちかまえています。そしてカーメルマウンテンハイウェイというくねくねとスイッチバックの続く道路とそれに続くトンネル。
ガイドブックで読む限りは、これといって特徴的なポイントが無いように感じるのですが、実は変化に富んだ地形がコンパクトにまとまっていて、それらを公園内の無料シャトルバスで結んでいるので、自動車を使わずにスムースに楽しめるのがこの公園の最大の特徴です。
宿泊場所は公園に隣接するSpringdaleという町にあるQuality Inn。少々値が張りますが、広くて設備の整った部屋で、3泊4日を快適に過ごすことが出来ました。冷蔵庫や電子レンジもついているので、マーケットで買った食材で簡単に食事をすることも出来るし、なによりくたくたに疲れて帰ってきてもキンキンに冷えたビールが飲めます。公園行きの無料シャトルバスが宿のすぐ前に停まるので、アクセスも簡単。
岩から染み出る水がぽたぽた垂れるウィーピングロックや砂岩の一枚岩としては(カテゴリーが細かすぎだけど)世界一のグレートホワイトスローンも見応えがあるけど、ナローズという谷を流れるバージンリバー川を遡るトレッキングが一番楽しい思い出になりました。
ナローズは渓谷の最も奥にあるので、シャトルバスで終点まで行きます。舗装された川沿いにハイキングコースがあり、15分ほど歩く間に、シカやリスがモデルよろしくアマチュアカメラマン達のターゲットに。人を怖がらないリスが食事をしていたりすると、自然発生するミニ写真撮影会に僕たちも参加しました。
舗装道路を最後まで歩くと、まだ午前中で水が冷たいにも関わらず、川にざぶざぶと入っていく人がたくさんいます。水に濡れる前提で服装を選んできた僕たちも、川の中へ。冷たい水が頭をシャキッとさせてくれます。
川は見た目よりも水の流れが速く、足を掬われそうになるくらい急な場所もあります。砂が堆積した川底もあれば、人の頭くらいの大きさの岩がごろごろして滑りやすい川底も。途中谷底に強風が吹いている場所があって、Tシャツ一枚では寒いことこの上ない。上着を持ってくるべきだったと後悔しました。
名前の通り、どんどん狭くなる川底を歩き続けると、左右に迫る岩壁はどんどん高さを増してゆくように感じます。もっとも狭いところで壁と壁の間が6m、壁の高さが60mというから今にも壁に押しつぶされそうな感じがします。岩壁は雨が降ると水嵩を増す川が、土砂や倒木を運ぶことで削られているので、波打つ襞が続きます。川の中にいるとその力が如何に絶大なものかが容易に想像できます。実際雨が降る時には流されて死亡する人が出るくらい急な流れが発生するので、ナローズに行く前には必ずビジターセンターで天気予報を確認します。
そんな険しい川底でも、ところどころで砂州に草木が茂っていて、景色に彩りを足しています。岩の赤味と緑の今トラスが美しい。
2時間くらい遡り続けて、2本の川が合流する場所に到達しました。さらにしばらく先へ進んで、それ以上景色が変化しなさそうな事を確認してから元来た道筋を戻っていきました。さらに先へ進んでいく人もいますが、彼らは川上り専用の靴と杖を持っていて、重装備です。
戻る途中、誰が始めたのか、手で持てるくらいの岩を積み重ねたアート作品のようなものが何十個も集っている場所があります。長くて倒れそうな岩が大きな岩の上に奇妙なバランスで直立しているものなどもあり、アクロバットのよう。僕も岩を拾って置いてみると、何度目かの挑戦の後、大きな岩を直立させることが出来ました。