ヨルダンの次はモロッコへと旅の駒を進めます。
モロッコは以前から一度は訪れてみたいと思っていた国。映画などでも頻繁に登場するため、漠然とした憧れを抱いていました。また、クスクスやタジンなどの料理が大好きな僕にとっては、本場ならもっと美味しいだろうという期待もあります。
アンマンからモロッコへは、One Worldの航空券を使ってアクセスできるフライトがありません。そこで、次のようなルートでモロッコ入国を目指しました。
- アンマンからマドリードへ飛行機で。
- マドリードからイベリア半島南端のアルヘシラスまで列車で。
- アルヘシラスからアフリカ大陸対岸のセウタまでフェリーで。
- セウタで国境を越えて、最寄りの町ティトゥアンまでタクシーで。
うまく乗り継げば1日で移動できるルートですが、始めての国で深夜にホテル探しをしたくないので、2日に分けて移動しました。
マドリード行きの飛行機は朝7時半発のフライト。国際線なので2時間前までのチェックインとあって、4時にはホテルをタクシーで出発。開いたばかりのカウンターでチェックインを済ませ、ラウンジで朝ご飯を食べてから一眠りすると、あっという間に出発時刻になってしまいました。
到着したマドリードの空港はスペインらしさいっぱいのデザインでとてもキレイですが、機能面の出来があまり良くなく、入国審査や荷物の受取り場所までが遠い遠い。しかも荷物が出てくるまでに30分以上待たされる調子で、これまで利用した空港の中では群を抜いて待ち時間が長い。ようやく出てきたバックパックを背負って、地下鉄へ。二回の乗り換えで市内中心部にある国鉄の駅まで向います。
その途中、この旅行で始めてスリに遭遇しました。危険と名高い南米や、日本人の盗難被害の多い東南アジアで一度も危ない目に遭った事がないのに、マドリードの地下鉄の中でやられるとは。
二人ともバックパックを背負っていて身動きが取りにくい状態でホームについた列車に乗車。すると車内の奥の方は空いているのに、ドアの近くで二人の女性に押し込まれたような状態になりました。何度「Excuse me!」と声をかけて奥の方に行きたい態度を示しても、二人は微動だにしてくれません。何かおかしいと思いつつ、無理やり女性を押しのけて車内の奥の方に移動すると、たすき掛けにしていたデイバッグのファスナーが開けられていました。中に入っていたハンドクリーナーや日焼け止めをまとめて入れてあるジップロックを盗られていましたが、女性の抱えていたコートをひっくり返して取り戻しました。
ゆんじょんもパンツのポケットについたファスナーを開けようとしているところを、相手の手をひっぱたいて躱しましたが、気がついていなければパスポートを盗られたかも知れません。何も盗られなかっとは言え、とても気持ちの悪い思いをしました。
駅についてアルヘシラスまでのチケットを手にして、途中車内で食べるためのエンパナーダを買ったり、ATMでユーロを引き出したりしてから、どたばたと乗車。ここまでの移動やスリに遭った疲れもあって、少し居眠り。徐々に暗くなる車窓の景色を眺めて、5時間半でアルヘシラスに到着。手近なホテルにチェックインして、温かいシャワーを浴びたらベッドにバタンキューです。
翌朝、久しぶりに見る雨の降る中、フェリーターミナルから出港。ジブラルタル海峡へ向けて出発する時点で、すでに対岸のセウタの町が見えていることに、ちょっとした驚きを覚えます。イスラム文化のアフリカ大陸北部と近代的なヨーロッパのあまりの近さが意外でした。
セウタに着いたら、そのまま国境行きのバスに乗ります。国境に近づくに連れて、モロッコの民俗衣装を纏った乗客が増え、イスラムの香りが増してきます。スペインとアラブが交じったような美しいセウタの街並みに反して、殺風景な国境に到着すると入国審査を待つ大勢のモロッコ人の群衆が。
スペイン国境とモロッコ国境の間のゾーンは、ある種無法地帯と化しています。両国の国境警察が通行人を引きずり倒して荷物検査をしていたり、従わないモロッコ人を容赦なく警棒で殴っていたりと、アムネスティーインターナショナルに通告したくなるようなシーンがあちこちで繰り広げられていました。どうやらモロッコ国境を越えると無事なようで、何十人ものモロッコ人が暴徒のごとく国境めがけて駆け込んで行く姿なども。
国境警察はモロッコ人に対する扱いとは正反対に、僕たちアジア人旅行者に対しては、とても丁寧な応対。迷っていると空いているゲートに案内してくれるし、入国審査以外の手続きはほぼノーチェック。あまりの応対の違いになんだか複雑な気持ちになります。
モロッコに入国した途端、フランス語が通じるようになります。8割方のモロッコ人が訛りの少ないフランス語で応えてくれるので、何かと安心。
入国審査を経た後、ベンツに無理やり7人乗りする乗り合いタクシーに乗って、ティトゥアンに到着すると、ガイドブックに紹介されていたホテルにチェックインし、2日間の長距離移動の旅を終えました。