パリは、ルーブル、オルセー、ポンピドゥー、最近出来上がったケブランリーなどの大型の美術館で有名ですが、街中にはこぢんまりとしていながらも貴重な作品を収蔵する美術館がたくさんあります。
僕は学生時代を美術館で過ごしたようなものだし、ゆんじょんも過去のパリ旅行の際にルーブルとオルセーを観ているので、小粒で良質な美術館に出かけることにしました。
最初に行ったのはロダン美術館です。彫刻家ロダンの著名な彫刻が、室内と付属する庭園で見学できます。常設展の他にロダンの作品を撮った写真展も開かれていたためか、観光客とともに学生の姿が目立ちました。
小雨が降っていたので、すぐに止むことを期待して最初に室内の展示を見て回りました。20代の若さの残る作品から、大成してから弟子たちが手伝った作品まで時間軸に見て行くことが出来ます。館内での写真撮影が許可されているので、カメラを持ったゆんじょんは何回もシャッターを切っていました。
ちいさな美術館とは言っても作品の数は100を超えます。ひとつひとつの作品に感動しながら、じっくり楽しんでいたら閉館の時間が来てしまいました。まだいくつか入っていないギャラリーがありましたが、屋外の大作を逃したらこの美術館に来た意味がありません。慌てて庭園に出て、地獄門、考える人、カレーの人々、バルザック像などを、雨足の強くなる中、急ぎ足で見て回りました。
次に訪れたのはピカソ美術館。建物が改装中で、夏以降2年間休館する予定だとか。
15歳の時に描かれた石膏像のデッサンから、晩年の作品まで時代を追って、細かい解説つきで見学できます。作品がたくさんあり過ぎて、ひとつひとつの印象が弱くなりがちですが、これだけまとめてピカソの世界に浸れる機会は多くありません。
これまで見た事の無かった切り絵の作品や、ブラッサイが撮った作品の写真が興味深かく楽しめました。
小品が多いので、作品数の多さに関わらずサラッと見てしまうことが出来ます。
続けてオランジュリー美術館に行きました。学生時代には何度も通った場所ですが、近年改装されて見やすくなったようです。時間があまり無く、駆け足で見ることになってしまいました。
まず、モネの睡蓮の連作が展示されている2つのギャラリーでどっぷりと浸って、蛙になったような気分を味わいました。この空間は昔と変わらず、妙に落ち着く独特の良さがあります。徐々に視力が衰えてきた時期に描かれたとは思えない、素晴らしい描写と印象派独特の光と色を追いかける描き方に、何度目かの感動を覚えます。
地下に展示された、印象派からナイーブ派までの作品は、日本にも来たことのある有名な作品ばかり。学生の時とは違って、作品そのものだけでなく作者の人生なども興味にあり、長い間パトロンに支えられて作品を作り続けたルドンの生活などに興味をかき立てられます。
美術館とは違いますが、イサム・ノグチの設計した日本庭園のあるユネスコにも訪れましたが、事前に良く調べていなかったため、週2回のガイドツアーだけだと入り口で知らされて、見ることは出来ませんでした。次回パリに行った際には絶対見逃せません。
自然史博物館にも行ってきました。僕がパリに住み始めた91年ごろに改装された、Grande Gallerie de l’Evolution(ガイドブックでは、「進化大陳列」と訳されている)が最大の見どころです。改装当時から、見やすく理解しやすい展示方法とそのデザインが話題となっていましたが、機会を逸していました。
前評判通り、デザイン的にも教育的にもとても良くできた展示内容に感心。少し控えめの照明は、日本人にとっては暗いと感じるかも知れませんが、神秘的な印象もあり好感が持てます。たくさんの子供に混じってゆっくり見学してきました。
この他にもゆんじょんを連れてゆきたい美術館がたくさんありましたが、今回はここまで。次回パリに行く時の楽しみにとっておきます。