ナイル川には様々な船が浮かんでいます。サガンが小説の中で描いた豪華なクルーズ船や、フルーカ(帆掛け船)、中洲の島までの送迎船、ナイルの魚を採る漁船など。
中でもフルーカは、誰でも格安でチャーター出来、ナイル川の流れと風にゆだねながらのんびりと時間を過ごせることで、旅行者の利用の(客引きの数も)多いもののひとつです。
アスワンからルクソールまで戻る列車の時間まで、思いがけず暇を持て余すことになったので、フルーカをチャーターすることにしてみました。河岸に付いた途端に取り囲んでくる客引きをかわし、フルーカの停めてあるところまで歩いて行くと、80歳を超えようかといった風情の老エジプト人が、フルーカを桟橋に括りつけているところでした。後をついてきた客引きの声を無視して老人と交渉を始めると、老人と客引きの間で一悶着が。どうやら紹介料を取ることで商売を成り立たせている客引きが、直接老人が客を取ることを良く思っていない様子。
喧々諤々の末、1時間25ポンド(約511円)で交渉成立。大きなエレファンティネ島やキッチナー島をぐるりと回るコースにしたかったのですが、戻ってくる時間が列車に間に合わなくなるかも知れないので、適当にお任せのコースで1時間半乗ることにしました。なぜか客引きの若者も同乗。
フルーカはエンジンを積んでいないので、そのスピードも風まかせ。老人とその親戚だという若者は向かい風に逆らうようにナイルの下流へと船を進めます。
老人が遠くを見つめて風を読んでいる(様に見える)様子が、とても絵になります。強い風を帆に受けて、船がひっくり返りそうなくらい傾くのがスリリング。川なので、潮風ではないところも、心地よさを増しています。
良い気分で30分くらい下流に進んだら、方向転換し、今度は畳んだ帆が風を受けるのに任せてゆっくりと戻ってきました。
短い船旅でしたが、なかなか楽しい時間です。最後に下船する際に、支払いと同時にバクシーシの要求。1ポンドだけ余分に払うと、少ないバクシーシに唖然とした表情をされました。楽しい気持ちが半減したところで、列車に遅れないようその場を後にしました。