3度目のマドリードにやって来ました。
これまでは他の都市へ向うための通過場所として通り過ぎただけですが、今回はきちんと観光します。
バルセロナやバレンシアでも高速道路の分岐が充分複雑でしたが、ここは抜群に入り組んでいます。複数の路線が並行して走る場所もあるため、カーナビも役立たず。何度か路線を乗り間違え、行ったり戻ったりを繰り返してようやくホテルのある近郊の町まで到着しました。
到着初日はゆっくり休憩。昨年出来たばかりのHotel Campanileはとても清潔で設備も整っており、ついつい長居してしまいそう。ファミリー割引とかで、マドリード近郊のホテルとしては値段もとても安い。
ホテルの近所にあるEl Corte Ingresデパートにスーパーがあり、そこでパンやワイン、お総菜を買い込んで、部屋で夕食。高級スーパーなので食材も高めですが、お総菜の美味しさが他のスペインのスーパーとはぜんぜん違う。おかげで毎晩ここのお総菜のお世話になりました。
翌日真っ先にやったことは、スペインを代表する3階建ての観客席のある闘牛場、ラスベンタス闘牛場で、観戦チケットを買うことでした。ラスベンタスの地下鉄駅を出た途端に現れる背の高い丸い建物。これまで見てきた闘牛場は、どちらかと言うと小さく素朴な感じだったのに対し、堂々とした姿は、威圧的でもありその大きさに圧倒されます。
闘牛士はこのラスベンタスで観客を沸かせることが出来たら一人前とか。施設が立派なだけでなく、ここを訪れる観客たちの目は、厳しい鑑識眼を持ち合わせているようです。
翌週以降にはマドリードの闘牛の本番とも言えるサンイシドロ祭りがスタートするため、そのチケットを買うための行列が出来ています。僕たちの求める今週のノビジャータは、列のない窓口で、以外にあっさりと買うことが出来ました。ソンブラの真ん中で、空いている席で最もアリーナに近い列を選びました。
闘牛が観られることが決まったら、ひと安心。観光にも身が入ります。
最初に向ったのはソフィア王妃芸術センター。ピカソのゲルニカが常設展示されていることで有名な、スペイン現代美術の宝庫です。ちょうどパリのピカソ美術館から作品を取寄せた企画展が開催中。まずは常設展を堪能するべしと、ピカソをスキップして2階の展示スペースへ移動。
19世紀末の具象的な絵画から、ピカソやダリ、ミロに代表されるキュビズムやシュールレアリスムなどの前衛芸術、つづく4階ではポップアートから前衛彫刻までの幅広い作品に目を通すことが出来ます。広い展示スペースを作品と作品の隙間を広く取ってゆったりとした展示は、静かに時間をかけて観る事が出来るようになっています。
3時間も館内を歩けばくたくたに疲れます。あまりの展示作品の多さから、最後にはどの作品を見たのかはどうしてもうろ覚えになりますが、ピカソのゲルニカの強烈なインパクトだけは、しばらく記憶に残りそうです。
次の日に行ったのはプラド美術館。ルーブルやメトロポリタンのように巨大な美術館をイメージしていたのですが、館内図を見るとそれほど大きくはない。それでも膨大な作品を収蔵していることには変わりありません。
館内は複雑な迷路状態で、どの順番で見ればいいのかが分かりませんが、とりあえず興味のあるカテゴリーから、時代や作家の順番に関係なくどんどん見てゆくことに。あちこちの美術館で繰り返し見てきたオランダ絵画、イタリアルネッサンス、フランス絵画などを一巡した後でやってきたのは、初期フランドル絵画の部屋。他の所以上に混雑気味の広間のほとんどを占めているのは、ボッシュの手による奇天烈なフレスコ達です。宗教絵画の典型的なテーマを扱っているにもかかわらず、昆虫や魚類などからヒントを得たと考えられる、奇怪でSFチックでそしてコミカルな表現。15世紀の人がこんな表現に辿り着けるなんて、どういう分けなのでしょう。そしてその後の芸術家たちがボッシュのような表現を再現することが無かったというのは、また不思議です。まるで現代からタイムスリップした人が描いたのか、あるいは宇宙人のような存在なのかと勘ぐってしまいます。