西部劇の舞台として、先住インディアン・ナバホ族の聖地として知られるモニュメントバレーは、アリゾナ州とユタ州にまたがる、広大な原野の中にあります。赤い土の地層を川や雨や風が削ることによって作られた、「ビュート」と呼ばれる彫像のような岩がたくさん並ぶ場所です。
ナバホランドとかナバホネイションと呼ばれる、ナバホ先住民族の自治地域を通って到達します。モーテルのある隣町まで20マイル以上という、まさに人里離れた場所。
ビジターセンターから申込の出きるツアーで巡ることも出来るのですが、僕たちはレンタカーでそのまま周遊コースへ乗り込みました。舗装のされていないダートロードを乗用車で走ると、多少のでこぼこでもタイヤが嵌って立ち往生しそうです。なるべく平らな地面を選びながらゆっくりゆっくり進めます。四輪駆動車ででこぼこもぬかるみも有無を言わせずぐいぐい走り回るのが本来の楽しみ方です。
戻ってみると車は前から後ろまで真っ赤な土ぼこりで覆われてしまいました。エアコンを効かせながら、外気を入れないようにして走っているので、車に乗っている僕たちが土まみれになることはありません。ツアーでジープや窓も扉もないカートに乗っていた人たちは大変な思いをしたはず。
コースは、両手の平を挙げてウェルカムしているようなLeft MittenとRight Mittenから入って、先住民のメディスンマンが雨ごいの祈祷を捧げていたというRain God Mesaを反時計回りに回るように、様々なビュートを眺めていきます。
象の形をしている(ようにも見える)Elephant Butteやラクダの形をしている(と言われればそういう気もする)Camel Butteなどを通って、ジョンフォード監督が何度もカメラを回したというジョンフォードポイントへ。重要な見どころには大抵インディアンの工芸品を売る小屋があります。
重要な見どころでは無いようですが、Rain God Mesaの端に立つ、太い柱のようなせり上がった岩に感動しました。岩の表面は巨大な刷毛で塗られたような表情があって、赤い岩のごつごつした造形と僅かな色彩の変化が、大きいだけではない自然の作り上げた作品として見ることが出来ます。
トーテムポールと呼ばれる長く細ーく岩が残っている場所は、今にも倒れてきそうで、ここが日本だったら地震であっという間に全壊しているだろうなと、日本人なら誰でも考えるはず。
トーテムポールを見るために車を停めていると、リタイヤ後のフランス人を満載したツアーのカートが3台停まって、ドライバーのインディアン達が歌を歌い始めました。たまたま通りがかった他の観光客も一緒に聞かせてもらえて、ちょっとトクをした気分です。カートがその場所を去る時に、なぜか皆僕に向って手を振っています。観光客になると、誰彼構わず手を振りたくなる病気に、僕たちも時々罹ることがあります。
別の場所では、軍隊の装甲車並の巨大なドイツ製RV(キャンピングカー)に乗った、ドイツ人の老夫婦と遭遇しました。話しかけて、RVの中を見せてもらわなかったことが今でも悔やまれます。
国立公園を回っているとRVをたくさん見かけます。何もない原野を走る一本道で渋滞していたら、大抵RVが原因です。重たい車重に不十分なエンジンなのか、上り坂でもあろうものなら車道を塞いでしまう。後続車は追い越そうにも前方が見えないので、反対車線に出たり入ったりを繰り返すハメになります。
レンタルすると日額1万円前後と少し値が張るのですが、モーテルよりもオートキャンプ場の方が多いくらいなので、寝食に困らず、またちょっとした冒険気分で楽しそう。今度アメリカを旅することがあれば、RVは外せません。