ベトナムでの約1ヶ月の滞在の後、ホーチミンシティから飛行機で向ったのは、カンボジアのシェムリアップでした。
シェムリアップ近郊に点在するアンコール遺跡を観光するのがその目的です。
アンコール遺跡と一言に言っても、何世紀もの間続いたクメール文明によって作られた遺跡は大変な数が発見されているので、バイクタクシーやトゥクトゥクをチャーターして数日かけて見学することになります。
今回滞在したのは日本人経営のゲストハウス、Relax & Resort Angkor Guest House。とてもクリーンでスタッフも大らか。ベトナムでのホテルなどと比べると若干割高ですが、朝食と夕食が無料で頂けるので結果的にとてもリーズナブルでした。
遺跡巡りに使ったトゥクトゥクもこのゲストハウスに常駐するドライバーさんにお願いしました。
到着の翌日から早速遺跡巡りです。まずはアンコール・トムの中心にあるバイヨン寺院の遺跡へ。倒壊していた寺院は日本の支援を得て少しずつもとの姿を取り戻し、アンコール遺跡群の中ではアンコール・ワットに次いで重要な遺跡とされています。
大きな顔の彫刻が微笑んで出迎えてくれます。足場の悪い中、壁のレリーフを眺めながら小高い寺院の中央めざして階段を上り下りするので、とっても疲れます。雨も降り出し、見学どころでは無くなったところで遺跡巡り一日目はギブアップ。
二日目はアンコール・ワット遺跡とタ・プローム遺跡へ。
大きな堀を隔てて迫ってくる美しいアンコール・ワットを前にすると前日の疲れも吹き飛びますが、午前中なのにフルパワーの太陽も手伝ってあっという間にぐだぐだ。堀に掛かった橋を渡るだけですでにひと仕事あとのビールが恋しくなります。
しかし一端遺跡の中に足を踏み入れれば、そこは石の支配する霊的な空間。暑さも忘れ訥々とレリーフを見て回ります。ヒンドゥー教の神話を描いたレリーフには作られた時期によって2種類あるように見えます。精巧で同じモチーフが繰り返されるのは寺院の完成とともに作られたレリーフ、少し稚拙だけど素朴な感じがするのは寺院の完成後400年ほど後に作られたものとのこと。描かれた神々の間に魚や動物が隙間を埋め尽くすように舞っているのがかわいい。
寺院の中央塔は、一段の幅は10cm程しかないのに高さは40cm程もある、急勾配の階段をよじ登って到達します。階段を諦めて塔の下から眺めているだけの人もいます。登るのはそれほど恐怖がないのですが、降りる時が怖い。
高い場所から眺めると遺跡の周辺に森が広がっているのがわかります。発見される以前はこの森が遺跡の中まで侵食していたのだななどと悠久に思いを馳せていたら、うろうろしていた野ザルにゆんじょんが足を咬まれました。幸い軽く咬んだ程度だったので怪我はありません。
アンコール・ワットを2時間ほどかけて周り、その後タ・プローム遺跡へ向います。遺跡はジャングルに覆い隠されていた時代を彷彿とさせるように、今も榕樹によって石積みの壁に穴を穿たれたままです。ガジュマルなどの榕樹の力は凄まじいもので、大きな石を積んで作られた建造物のあちらこちらから根を張って、その根が徐々に太くなるに従い石を押しのけて建物を倒壊させてしまいます。所によっては、榕樹の根によって建造物が支えられているように見えることもあります。ゲーム「Tomb Raider」の世界そのものです。
瓦礫と遺跡の中間のようなタ・プロームは、それでも内戦後の10年で随分と観光地として整備されているようです。観光客の足下には木材を組んだステージのような足場が作られていて、躓いたり転んだりする危険はありません。榕樹の侵食が激しいところでは、記念撮影用と思われる踊り場が作られてもいます。