ローザンヌを出て、レマン湖畔をアルプスの雪山を眺めながら毎年のジャズフェスティバルで有名なモントルーを越え、ルートを南下します。途中山頂を越えるつづら折りの道を走ってフランスに入ったかと思うと、長いトンネルを抜ける頃には闇夜に点々とオレンジ色の街灯に照らされた教会や家屋が可愛らしい、イタリアにやって来ました。
交通量の少ない夜の高速道路は、舗装の真新しさも手伝って、とても走りやすい。アオストを過ぎてミラノに到着するまで、制限速度時速130kmギリギリで飛ばしてきました。ミラノの郊外に位置するホテルは一方通行の多い運河沿いにあって、ホテル前まで到着できずに何周も近所を走らされる事になりました。
あまりミラノに魅力を感じていなかったので、予定は1日だけ。ダ・ヴィンチの最後の晩餐と、ドゥオーモだけは見に行こうと、市内に繰り出します。シーズンオフなので予約無しでも大丈夫と、サンタマリアデレグラッツィエ教会まで行ってみたものの、日曜日で入館時間が限られている事も重なって、門前払いをくらいました。
続くドゥオーモは、近場に路上駐車場所を見つけて車を留め、そこから歩いてスカラ座、ヴィットリオエマヌエーレ2世のガレリアなどを見学しつつ到着。ガレリアから出た途端に視界いっぱいに広がる、白いドゥオーモに思わず嘆声が漏れます。広場に集った鳩をよけながら、離れた場所から徐々に近づいて行き、変化する教会の姿を堪能。内部はミサの最中とあって、全部の見どころを回る事が出来ませんでしたが、僕たちにとっては珍しいミサの進行の一部始終が間近で見る事ができて興味深い。屋上に登ると驚くほど広々としたスペースがあります。街の隅々まで見渡せるような高さに流れる風が、春先のような気候に心地よく涼しさを与えてくれ、日光浴する欧米人たちも腰が重くなりがちです。
ドゥオーモを降りて、少し遅めの昼食をレストラン(高い!)で摂ってから、次の目的地であるヴェネツィアまで行くため自動車に戻りました。すると運転席側のドアノブについた鍵穴のカバーが外れ、地面に転がっています。落ち着いて調べてみると、ドアノブの周辺が盛り上がって変形しており、鍵穴にキーが差し込めない状態になっていました。事故か自動車泥棒の仕業か分かりませんが、とりあえずプジョーの緊急アシスタンスサービスに電話。その間ゆんじょんが盗まれたものなど無いかをあちこちチェックし、なにも盗られてはいないようだったので、近くの警察署で盗難未遂の報告書を書いてもらいに行きました。警察署では、それぞれ被害届を書いてもらうため、すでに何人かが順番待ち。華麗な街なのに犯罪は少なくないようです。
思いがけないアクシデントに、予定が大幅に遅れる事になりましたが、とにもかくにも何も盗まれていない事に一安心。高価なものといえば、パソコンくらいしかありませんが、絞りに絞った旅行用品はどれも大切なモノばかり。
キーが差し込めなくても、リモコンでドアを開けられるので、修理は先延ばしにしてそのまま旅を続ける事にしました。
後日、パリに戻ってからドアの修理に2週間もかかる事が判明。保険会社と一悶着して、結局レンタルの最後まで、修理せずにそのまま乗り続ける事になりました。イタリアはレンタカーを狙った自動車の盗難が多いようです。この後イタリアを出るまでは、自動車が大丈夫か気が気でない毎日を過ごしました。