オークランドを出発した僕たちは、ニュージーランドの北島を北上。最北端のレインガ岬を目がけて走っていました。
行く先を阻むように降り続ける雨。ノースランドの風景は、フロントグラスを流れる雨に視界を阻まれ、前後を行く他の自動車しか見えなくなる瞬間もあります。本来なら海岸線沿いの景色の良い道路を選んで走りたいところですが、時間も限られていることから、なるべく早く北端に近づけるよう、幹線道路を通るコースを通りました。
オークランドを離れるに従い、土地の名前にマオリ族の言葉が多くなってゆきます。
ファイランガでスーパーマーケットに立ち寄り、食料品を買い足しました。Pac’N’Saveはこの後の旅でも何度かお世話になる、大型食料品スーパーです。ここからレインガ岬へ往復する間に必要な食材を買い込むと、小さな冷蔵庫はいっぱいに。念のため、ミネラルウォーターも5リットルの大きなボトルで購入。閑散とした駐車場に停めたキャンピングカーの中で、サンドイッチを作ってお昼ご飯を食べたらまた出発。しばらく止んでいた雨がまた降り出しました。
今日の夜は、マンゴヌイという港町に近いヒヒという小さな村で泊まります。シーズンオフなので、キャンプサイトは特に予約しなくても充分空きがあるし、無かったとしても1日だけならキャンピングカーをどこかに停めて、夜を越すことは問題ありません。
マンゴヌイのインフォメーションで、この周辺の観光情報を集めます。天気が良ければ港から素晴らしい景色が見えるはずです。雨の降り続ける中、遠くに見えるはずのたくさんの島は、目を凝らしても見ることが出来ません。数時間のドライブの後、ヒヒに到着しました。
レンタル会社で貰った、キャンパー向けのガイドブックに書かれている住所を頼りに、キャンプサイトを探しているうちに、舗装されていない砂利道に入り込んでしまいました。Uターン出来る場所を探して、足場の悪い坂道を進んでいると、牧場のような柵のある私有地に突き当たってしまいました。私有地に入ってゆくわけにも行かず、止む終えずバックで坂道を戻っている途中、道路の端に作られた溝に後輪が嵌り込んで動けなくなってしまいました。
溝と言っても土を削っただけの緩やかなもの。何とか抜け出せないかいろいろ試してみるものの、車の重さのせいか、余計に嵌り込んでゆくばかりで埒が明かない。雨も激しくなって来たし、日が落ちて暗くなりそう。こんな時のために借りておいた携帯電話で、ロードサービスを呼ぼうとしている時に、後ろから坂を登ってくる自動車のヘッドライトが見えました。
黒い四駆がキャンピングカーの脇を通りすぎる時に、ウィンドウを開けて声をかけると、運転していたのは日本人の女性でした。どうやら先程の私有地に住んでいる人らしい。家に戻って旦那さんを呼んでくると言い残して、走って行く四駆の後ろ姿を見ながら、ゆんじょんと二人でほっと一息。
僕たちが旦那さんの到着を待っている間に、坂の下からジープが走ってきました。運転していたのは13歳位に見える男の子。隣にはそのお父さんと思しき男性。ウィンドウ越しに声をかけられ、いきさつを説明すると、2人とも車を降りて、どうやって溝からキャンピングカーを引き出すのか検討し出しました。
車の下を見てみると、牽引出来るような場所がリアバンパーの下に一箇所あるだけ。これを使って、ジープとロープで繋ぎ、横滑りさせるしかないと説明して、ロープを取りに戻ってゆきました。
戻ってきたジープと旦那さんの四駆が同時に到着。僕が早口の英語についてゆけず、戸惑っているうちに、男の子が手際よくロープを結わいて、お父さんがジープで引っ張り、僕が運転席に戻ってハンドルを握って前輪を調整しているのを、旦那さんが全員に指示を送ると言うフォーメーションが出来上がっていました。