ホテルは古民家を改造したもの。建物自体は古いものらしいのですが、内部はキレイに改装されていて居心地が良い。35リラ(約3,519円)の宿泊代はこの地域では高いほうなので、別のホテルに移ろうかとも考えていたのですが、朝食が感動的に美味しく、結局連泊することにしました。
朝ご飯の献立は、ごく一般的で、パン、オリーブ2種類、チーズ2種類、ヨーグルト、トマト、キュウリ、バターと蜂蜜です。ブドウの実が入った、サフランの蜂蜜が抜群に美味しく、オリーブも丁度良い漬かり具合。ついつい食べ過ぎてしまいます。
サフランボルの名所は、世界遺産にも指定されている、古民家の集っている旧市街。中心を流れる小さな川の渓谷に拓けた、歩いて30分で一周出来る程度のちいさなエリアです。ハマム(イスラムのサウナ。改装工事のため10月まで閉館中)のあるチャルシュ広場を中心に、周囲を小高い丘で囲まれています。古民家のうち3軒が修復・公開されていて、それらを見て回ったり、フドゥルルックの丘の展望台に登ったりして時間を過ごしました。
カイマカムラル・エヴィは19世紀に県知事の邸宅として使われていた建物。木造の柱の間に漆喰で埋めた壁の構造は、どことなく日本の建築にも通じる懐かしい雰囲気です。窓が小さく作られているのは、冬に暖気が逃げない構造にするためだとか。内部にはマネキンを使って、当時の様子を再現した展示があるのですが、これが遊園地のお化け屋敷もびっくりなほどスリリングです。部屋の壁に取り付けられた扉を開けると、風呂桶が置かれているのがこの地方の民家の特徴的な構造。カップボードもタンスも全部作り付けで、壁の中に仕舞い込む斬新な造りです。照明がなく薄暗い部屋の中で、手当たり次第に扉を開けている時に、上半身だけのマネキンが風呂桶に入っているのを発見。飛び上がるほど驚きました。(生きた)猫が寝ている部屋もあり、もう何が何だかわかりません。
フドゥルルックの丘へは、カイマカムラル・エヴィの先にある崩れそうな階段を登って到達します。特にこれと言った見どころがあるわけではありませんが、公園の入園料を払って、ジュースと冷たいお茶をもらい、展望台からの景色を眺めてぼーっとすることが出来ます。この公園は町の若者たちの逢瀬の場になっているようで、あちこちでいちゃいちゃしている男女を覗き見ることが出来ます。
ジュースは地元で作られたサイダー。お茶は町の名前にもなっているサフランで作られたお茶。どちらもとても美味しい。
ゆんじょんはナザールボンジュウという、目玉のお守りのブレスレットをオーダーメイドしました。イスタンブールで見かけるナザールボンジュウは、大きなものは全部ガラス細工で作られていますが、ちいさなものは青いガラス玉にペイントして目玉が描かれているだけ。畳一帖くらいの小さな工房で、ガラス細工の小さなものがネックレス用に売られていたのを、ブレスレットにしたいと注文すると、腕のサイズぴったりに合せて作ってくれました。
オバサンとオバアサンのふたりで切り盛りする、小さな町の食堂で何度か食事をしました。味はそこそこ。毎回、ご飯代を払おうとすると、お釣りが無いので切りの良い金額まで安くしてくれるし、隣の席で親戚同士の食事会が始まったら、一緒にどうかと誘ってくれるしで、何かと家族的な優しさが心地よい。食べ終る前に誘って欲しかった。
町の人全員が優しくて、はにかむような笑顔が忘れ難い。観光で成り立っているはずなのに、商売に必死さが感じられず拍子抜けします。15分おきにやってくるドルムシュを除けば、自動車やバイクがほとんど無くいつも静かで落ち着きます。古民家と同じように、遠い昔からゆっくりと同じ時間が流れているような錯覚を感じる町です。