本当は2泊するつもりだったのですが、ゲストハウスが香港よりも高いのとマカオの主な見どころが数時間で見て終えられることに気付いたので、日帰り旅行に変更。わざわざフェリーターミナルまで行ってチケットを買う段階での決断だったため、急いでゲストハウスに電話。香港での宿泊を延長できるかどうか確認すると同じ部屋がキープできるとのことなので、安心して翌日のチケットを買いました。
フェリーは300人は乗れるであろう大きなもので、尖沙咀からマカオまでを1時間弱で繋いでいます。激しい雨降りで大型の船でも揺れますが、ここ数日の町歩きでくたびれている僕たちはものの数分で爆睡。気がついたらマカオでした。
マカオのパスポートチェックは新しいシステムに切り替えるための工事中だったからか、これまでに見たことがないほどの混雑具合です。落ち着きのない中国人に囲まれながら、若干いらいらしながら検査の列に並びます。入国審査をくぐった後も、あふれ返る中国人を押しのけながら両替をしたり、ツーリストインフォメーションで地図を入手したり。フェリーターミナルの外に出てほっとしたのもつかの間、慌てて乗ったバスは目的の市内中心部ではなくPorto de Cercoという中国国境との関門へ向う逆向きでした。
逆方向に乗り換えようにも、マカオ市内はほとんど一方通行の道でどこに行けば逆方向のバスに乗れるのかも分からないうえ、小銭をバスに乗るために使ってしまったので、結局終点に着いてからタクシーに乗り換え。
マカオは世界遺産に登録されている街ですが、主要な史跡は市内中心部に集中しています。ポルトガルの影響の濃い街並みは、ヨーロッパの中華街といった風情。道が石畳だったり、タイルのモザイクが敷いてあったり、建物にヨーロッパの影響が見られる点を除けば、広東語の看板があちこちにひしめきあっていて、あまり香港と代わり映えがしません。日本史でもおなじみのイエズス会が建てた聖ポール天主堂と砦の近辺が辛うじてマカオらしい部分か。
砦に登ってみましたが、高い場所から見る市内は香港のそれと同じく安作りのアパートに、フジツボのように張り付くエアコンの室外機が見苦しい。建築中のカジノやマンションがさらに景観を損ねているのが残念です。中国とを隔てる川向こうには、珠海の街が同じような風景をさらしています。
韓国に持ってゆくお土産を買ったり、本屋に入ったりしながら、予定のコースを一巡すると、帰りのフェリーまでまだ3時間ほど時間が余っています。そこで、向ったのは歩いている途中で見かけたポスターのマカオ藝術博物館。旧ソ連に生まれ、現在もマカオに住むロシア人アーティストKonstantin Bessemertnyの個展が開かれていました。
マカオのカジノやセレブの生活をシニカルに捉えたとてもユーモラスな絵画やインスタレーションです。どの絵にもある種の快楽主義が感じられ、半分かそれ以上冗談で制作していると思えないものもあるけれど、的確な人物の表情やシーンの描写が評価されているのでしょう。欲と堕落の狭間に人間の滑稽さを描く、現在のマカオを代表するアーティストのひとりとされています。
この美術館、上記の他にも若手アーティストの作品展やロベール・ドワノーの写真展を開いていますが、1階までなら無料、2階以上は5パタカ(約71円)で見放題というなんとも有り難い料金設定です。大型の展覧会の際にはまた違うのかも知れませんが、決して質の低くない展示をこの値段で見られるのはスバラシイ。
マカオはあまり感動がありませんでしたが、マカオ藝術博物館はもう一度足を運びたくなる場所です。