スペインに着きました。
南仏の友人宅を出て3時間半のドライブ。バルセロナ郊外のホテルに着く頃には、夜もすっかり更けていました。街頭の少ない真っ暗な高速道路。前を行く車のテールランプを追いかけながら、フランスからスペインへと国境を越えます。
バルセロナの位置するカタルーニャ地方は、フランス人観光客を多く受け入れているからか、ホテルやレストランなどでは流暢なフランス語を耳にします。チェックインしたのはCampanile。フランス系の中級モーテルです。バルセロナの中心地まで車で1時間近くかかるのに、シーズンオフの特別割引料金でも一泊49ユーロ(約7,807円)。通常は70ユーロ(約11,153円)。
スペインでは南部を除いては宿泊料が高めで、ネットで安く予約出来るホテルも限られています。貧乏旅行者泣かせの国です。
バルセロナは、ガウディだけを見に来たと言ってもおかしくないくらい。毎日ガウディの作品を見て歩きました。どの作品を訪ねても驚きと感嘆の連続で、うまく言葉に書き表す事が出来ません。
最初に訪ねたのはグエル公園。クネクネとカーブしたベンチの続くテラス、タイル張りのトカゲの噴水、波の形に作られたアーケードなど、この場所を代表する要素はたくさんありますが、まず驚くのはその見物客の多さ。
バルセロナ市が買い取って公共公園として解放しているため、近隣の家族連れから大型バスで乗りつける団体観光客まで、とにかくたくさんの人で溢れそうです。
目ぼしい写真スポットは入れ替わり立ち替わりの記念撮影が続くので、どう頑張って撮っても背景画いまひとつ。予想外に広い公園の面積と、人の多さに疲弊してしまい、草臥れ切って外に出ました。
次に行ったのはカサミラ。こちらもたくさんの人で賑わっていますが、有料だからか、騒々しい高校生の見学グループを除けば大人しい。オーディオガイドを借りて、ガイドの声に促されるまま、館内を巡りました。
ミュージアムショップのマークにもなっているデザインの門。門を入ってすぐ右手に見える吹き抜けの中庭に設えられた階段が、生きもののようなデザイン。造船技術が使って作られているとの話。
屋根裏にあたる階は、放物線状の壁を連ねた構造物が、屋根の重さを分散する造り。ここに、建物の縮尺模型や、設計を理解するための図や映像を集めた、資料館があります。展示の主旨は、独創性ばかり強調されがちなガウディの建築物が、如何に合理的な構造や斬新な建築技術に基づいて建てられているか。後世の建築家たちに多大な影響を与えた事は言うまでもありません。分かりやすい展示方法で、オーディオガイドが無くても充分理解出来ます。
集合住宅として作られ、各階にはたくさんのブルジョワが住んでいたらしいですが、当時の室内の様子を再現した展示もあります。
屋上に登ると、バルセロナの市内が一望出来ます。素晴らしい景色も色褪せてしまうような、複雑ねじられた形状の煙突が立ち並び、静かにカサミラを護る守護神のようにも見えます。
ところで、建設当初は加工しないままの石を使った外壁を醜いとされ、Pedrera(石切り場)という呼び名を付けられたとか。現在もPedreraが通称名として通っています。時代を超越した芸術作品が、後の時代になってから評価されるのは良くある事ですね。