やって来ました、イスタンブール。寝ぼけ眼のまま入国審査を越えて荷物を受けとると、次なる試練が待っていました。飛行機が到着したのは現地時間の朝3時半。トルコ人と思しき人々は、迎えに来た人と一緒に出口に吸い込まれて行きますが、僕たちはバスで市内まで行く予定。これからまた4時間ほど、公共交通機関が動き出すまで空港で足止めです。人気の無い空港で、荷物を足下に置いて待ち合いロビーのベンチで寝て過ごします。
ガラス張りの建物の外が明るくなってくるのに併せて、空港内にも徐々に人が増えてきました。外に出ると太陽が眩しい。パリやフランクフルトと比べて随分気温が高く感じます。ここはイスラムの国。エジプトでの旅を思い出しつつ、周囲に鋭く警戒の眼差しを投げながらバス乗り場へ。
ところが、乗るつもりだったLevent行きのバスが見つからない。違うバスの運転手に、ここで間違いないかと尋ねると、遠く別の駐車場の方角を指さしながら、あっちへ行けと言います。その通りにすると、駐車場の真ん中にバス停の標識も何も無いところでバスが数台停まっていて、その内のひとつが市内に向うバスらしい。これでは、現地の人でも無い限り、どこで乗ったら良いのかなんて分かりません。
バスで乗り合わせた女性が、僕たちが二人並んで座れるように席を譲ってくれた事にとても驚きました。でもこれはトルコで受ける数々の親切の始まりにしか過ぎません。
通り過ぎてゆく風景が、閑散とした工業地帯から、集合団地のつづく近代的なものに変わって行きます。マルマラ海に浮かぶ船が見える頃には、混沌とした中東の地方都市のようになり、巨大な橋を越えると、起伏のある丘に石造りの建物が所狭しと建ち並ぶ、ヨーロッパの西側と言ってもおかしくない情緒ある風景に。アジアとヨーロッパを繋ぐ、イスタンブールの姿です。
Leventに到着。ここから先はメトロに乗ってTaksimまで。駅員さんに促されるままトークンを買って、電車に乗ります。
ゆんじょんがバックパックを担いで車内の手摺りに掴まっていると、目の前に座っていた男性が席を譲ってくれました。どう見ても男性の方が年上。アジアでもアメリカでもヨーロッパでもこんな親切に出会ったことがありません。驚いている僕たちに、ニコニコしながら何かを言っていた彼。僕たちは何度も「Thank you.」を繰り返していました。
Taksimに到着したら次は市電に乗り換え。予約したゲストハウスの最寄り駅で降りて、地図を片手にゲストハウスを探していると、通りがかった男性が流暢な英語でホテルを探しているのかと聞いてきます。どこかの宿に連れていかれて騙されるんじゃないかと、警戒したのが恥ずかしくなるくらい、ちゃんと僕たちのゲストハウスの場所を教えてくれて、爽やかに去って行きました。
部屋に案内されたら、ぐったり。長時間の移動の疲れ、初めての街を歩いたこと、陽が昇るにつれて上がってきた気温。なんとか気力を出してシャワーを浴びたら、ベッドに倒れ込みました。
ホテルへの到着が朝10時頃。パリのホテルを出発して、丸一日経っていました。